神戸の音楽フェスで転倒事故、男女3人が重軽傷 兵庫県警が捜査
2017.7.15 08:49
兵庫県警は14日、神戸市で5月に開かれた音楽フェスティバルで転倒事故が起き、大阪府藤井寺市の無職女性(21)が脊髄を損傷するなど16〜21歳の男女3人が重軽傷を負っていたと発表した。県警は業務上過失傷害の疑いもあるとみて主催者や警備会社から事情を聴く。
〜後略〜
〇引用元URL (産経west)
http://www.sankei.com/west/news/170715/wst1707150026-n1.html
【 カミコベとは? 】
本イベントは、阪神淡路大震災被災地である神戸から、減災・防災・震災の啓蒙と、神戸 PR を目的としたチャリティ・イベントで、なんと、入場無料で行われるため、毎年、3万〜 4万人が訪れる大規模音楽フェスらしいよ。
場所は、ワールド記念ホールや神戸国際展示場など、複数の会場でステージが繰り広げられるんだけど、まぁ、会場のキャパシティが、ざっくり 1万人+1万人 くらいの収容ってことを考えれば、明らかに来場者が多すぎるよね。
特に、会場が複数の場合、ステージ間を移動する際の混雑はハンパないから、ちゃんと人の流れをコントロールできるかが、イベント成功の一端を担っているといっても過言ではない。
【 転倒事故 】
さて、記事見出しでは 「転倒事故」 とあったので、読む前は 「モッシュによる事故かな?」 と思ったんだけど、どうやら、入退場の際の混雑による将棋倒しが原因らしい。
負傷者は 3名で、内ひとりは脊髄損傷という重症とのこと。
音楽フェスでは、予めタイムテーブルが公開されているから、ステージが終わったら、次のステージへ急ぐため、入退場口が混雑するのは自明の理。
運営は10年以上のノウハウがあるはずなのに、どうしてこのような事故が起こったのだろう?
単純に考えれば、イベント規模に比べてスタッフが足りず、安全に人の流れをコントロールできなかったということになる。
カミコベは、これだけ大規模のイベントながら 「入場無料」 で開催されるため、多くの来場者が集まる。
集客が多いのは結構なことだけど、このような事故が起こってしまったということは、運営組織が、会場の安全対策を軽視していたということに他ならない。
【 事故は必然だったのか? 】
この事故は、来場者が多すぎて、来客者の流れをコントロールできなかったことが原因で発生した。
だから、出入り口増やしたり、入場規制を行うなどの対処で、事故を回避できた可能性は高い。
会場キャパシティに対し来場者が多いということは、長年イベントを運営する組織であれば。把握していなければならないことだ。
なのになぜフタッフが足りなかったのか?といえば、チャリティ・イベント故の資金不足が原因だったのではないだろうか?
本イベントは、docomo、Sony Music、第一興商、Spotify、EMTG など 多くの企業が出資しているけど、それとグッズ売上だけで 4万人規模のイベントを企画・運営するのは、難しかったということだろう。
結果、このような事故が起こってしまったのだから、いくら集客や話題性があったとしても、イベントとしては本末転倒だ。
【 イベントの収支について 】
コミコベは、販売収入、助成金、協賛金によって運営されてるみたい。
その収支は、イベント公式サイトで報告されているよ。
でも、開催年度によって記載項目が変わっていたり、かなりみにくいので、2015年-2016年の収支をまとめてみた。
2017年の収支をまとめなかったのは、まだ発表されていないからだよ。
※1、※2
2015年、2016年と基本的に赤字の構成で、運営資金が潤沢であったとは、とてもではないが言い難いね、
2015年には、クラウドファンディングによる資金調達も成功し、前年の欠損金をペイしても収益があがっている。そのまま継続しなかった理由はわからないけど、もしかしたら、収益性が高くなってしまい、チャリティとして難しくなったから止めたのかもね。
カミコベには、700名以上のボランティアが参加している (※3) みたいだけど、会場キャパに対して少ないと感じる人数だ。
大規模イベントでの運営組織といえば、統括部門、事務部門、運営部門、進行部門 (設営人員は、設備施工に計上されているものと考える) に分けられる。
本イベントは複数会場を利用することもあり、来場者を誘導する運営部門と、機材管理なども含む進行部門の負担は、想像に難くない。
具体的な情報はあまり得られなかったけど、公開されている情報から想像してみると、この運営組織が、人手不足に陥っていたであろうことは、間違いない。
【 募金の状況 】
カミコベは、チャリティイベントなので、開催ごとに募金額が発表されているよ。
こちらは、速報値で 2017年の金額も発表されているので、2015年から2017年までまとめてみたよ。
2015年、2016年に比べ、2017年に大幅な改善の兆しがみられるね。でも、来場者を 4万人とした場合のひとりあたりの募金額は、大幅に改善しているはずの 2017年でさえ @219円というありさま。
一応、募金のほかにも出演バンドごとのチャリティ・グッズ販売をとおしての募金もあるけど、来場者による募金には遠く及ばない。
そもそも、チャリティ開催で来場者あたりの募金額 219円というのは、いくらなんでも少なすぎやしないか?キツイ言い方をするなら、「このイベントには 500円も払う価値がない」 と、来場者に突きつけられているのと変わりない。
もしかしたら、カミコベを 「無料イベント」 と勘違いしている層もいるかもしれない。
というのも、イベント公式サイトをのトップをみると「意地でも今年も入場無料」 という文字が飛び込んできて、カミコベがチャリティ・イベントだとは気づきにくい作りになっている。
一度のイベントで、来場者から 870万もの募金を得られるのは、なかなか大したイベントだと思ったけど、入場無料ということと、来場者が 4万人ということを考えると、かなり残念な金額だと言わざるを得ない。
【 入場無料形態での限界と改善への道 】
カミコベは、2005年より続く老舗チャリティ音楽フェス。
「入場無料」を謳い、回数を重ね、規模も拡大してきたが、来場者あたりの募金額は少なく、チャリティ・イベントとしての開催意義が問われていると感じる。
更に、このような重傷者を出す事故が発生してしまったのは、神戸の PR だけでなく、減災・防災・震災の啓蒙もテーマとなっているカミコベとしては、致命的ともいえる。開催目的が、「本来のテーマ<話題性」 と変わっていることを意味しているともとれるからね。
その変遷は、こうした事故が発生したにも関わらず、イベント公式サイトでなんの説明もないことからも、察することができる。
こうした中、今後もイベントを存続させるのであれば、安全対策の立案とシステムの構築、そして、それを実行できるだけの運営資金を確保するのが急務だといえる。
そこで、こんな改善案を考えてみた。
要は、入場無料を止め、イベント収益から募金を行う形態へ移行しようって案。
運営の「入場無料」という伝統を続けたい想いは、募金明細やイベント収支を真摯に行っていることからも想像できる。
しかし、キャパシティを大きく超える来場者は必要ないし、運営資金に余裕がなく、会場の安全対策が犠牲になっては本末転倒。更に、無料イベントと勘違いされているのでは、イベントとしていろいろ破綻している。
チケット制にすれば、発券以上の来場者はこないため、必要以上の混雑を避けることができるし、チケット売上から資金も得られるため、必要な運営体制を構築しやすい。
それに、かなり大雑把な概算ではあるけど、入場無料で募るよりも多くの募金を集めることができそうだ。
【 まとめ 】
カミコベ'17 で発生した将棋倒しによる負傷事故は、3名が負傷し、内ひとりが脊髄損傷するという大事故だった。
カミコベは、入場無料を謳い規模を拡大してきたが、キャパシティを超えるにいたってもそれを続ける必要があったのか、激しく疑問に思う。今回発生した事故は、運営組織が、話題性を重視し、会場の安全性を軽視していたから発生したともいえるだろう。
今後、運営組織の問題で、来場者がこうした事故に遭わないためには、これまでの 「入場無料」 を止め、運営体制の在り方を再構築する必要があると考える。
また、そうした努力をしなければ、イベントの継続は難しいだろうね。
※1^「COMIN'KOBE15大成功ありがとうございました!」(COMIN'KOBE15) 2015.04.29
http://ck15.comingkobe.com/
※2^「COMIN'KOBE16収支報告(2016/9/30現在)」(COMIN'KOBE16) 2016.09.02
http://ck16.comingkobe.com/news/news20160902.php
※3^「遂に10周年を迎えるCOMIN’KOBEの 歴史を辿る!」(Jungle Life) 執筆年月日不明
http://www.jungle.ne.jp/sp_post/196-cominkobe/
※4^「COMIN'KOBE17募金額、当日の写真をUP!」(COMIN'KOBE17) 2017.05.10
http://comingkobe.com/news/news20170510.php