あくまでも、3億9,500万円相当分の窃盗に関する判決。
三菱UFJ銀元行員に懲役9年の実刑判決、貸金庫窃盗事件-東京地裁
鈴木英樹
2025年10月6日 15:10 JST 更新日時 2025年10月6日 15:31 JST
三菱UFJ銀行の貸金庫から顧客の金品を盗んだとして窃盗罪に問われた元行員の山崎由香理被告(47)の裁判で、東京地裁(小野裕信裁判官)は6日、懲役9年の実刑判決(求刑・懲役12年)を言い渡した。
~中略~
日本経済新聞などの報道によると、公判の過程で山崎被告は、起訴内容に含まれていない窃盗も含めると、「100人余りの金庫から17億-18億円分を盗んだ」と説明した。
~後略~
三菱UFJ銀行元行員による、貸金庫の顧客資産窃盗事件 (現金約6000万円と金塊29個、約3億3,000万円相当) について、10月6日、懲役9年の判決が言い渡されました。
記事の伝えるところによると、被告は「100人あまりから、約 17億 ~ 18億円を盗んだ」としているので、今回の判決は、その内の約 4億円に関するものへの判決です。
さて、被告は、計 17億 ~ 18億円を窃盗したわけですが、それをどのように使ったのか?その詳細は、日テレの記事が報じているので、記事を紹介します。
【詳報】「悪人は私。三菱UFJを悪く思わないで」貸金庫から“約18億円”一般職から管理職に出世した元行員がなぜ…法廷で語った巨額窃盗の理由【#司法記者の傍聴メモ】
日本テレビ放送網
2025年10月8日 17:00
「三菱UFJ銀行はいい会社。お客様を大事にする。社員を大事にする。悪人は私1人で、三菱UFJ銀行を悪く思ったりしないでください」法廷で古巣への“愛”を語るとともに、自らを「悪人」と称したのは、三菱UFJ銀行の元行員・山崎由香理被告(47)。管理職として貸金庫業務の責任者を務めながら、顧客6人の貸金庫から金塊や現金など計3億9500万円相当を盗んだ罪に問われていた。起訴されなかった分も含めると、「顧客約100人の17~18億円分」に手をつけたと明かした山崎被告。前代未聞の巨額窃盗事件はなぜ起きたのか。法廷で何度も語ったのは、約4年半にわたる犯行を正当化するような“言い訳”だった。
~中略~
2013年には約1200万円の借金を抱えていたという。この借金は、夫に肩代わりしてもらったという山崎被告。「もう一度ギャンブルに手を出したら離婚」との誓約書を夫と交わし、給料は夫が管理する「小遣い制」になった。
~中略~
検察側によると、顧客の金品を盗み始めた2020年以降、FXによる損失は計11億4300万円にのぼり、自力で返すには不可能なほどに膨らんだ。
~中略~
三菱UFJ銀行は7月末の時点で、被害にあった顧客に計約11億円の補償を行ったが、山崎被告から回収できたのはわずか約860万円にとどまっているという。
~後略~
ツッコミどころ満載すぎる。
まず、心象を良くしようって算段か、「悪人は私」というコメントをしていますが、この事件では、三菱UFJ銀行の杜撰な管理体制がつまびらかに報道されているので、銀行が全く悪くないわけない。
そもそも、銀行員は FX取引を禁じられているハズなので、被告が出来ている時点でやばい。
次に、貸金庫の窃盗をはじめる以前に多額の借金をして、個人再生手続きをしています。自己破産と異なり、借金返済が全額免除になるわけではなく、分割返済になります。この時は、旦那さんが立て替えてくれたみたいです。
重要なのは、この「個人再生している」というとこ。
個人再生とは、裁判所が承認した再生計画に沿って、(だいたい) 3年間で債務を返済するという制度です。ポイントは、返済計画によって、返済額が減額されるという点と、個人再生手続きに入った時点で官報に掲載されるということです。
官報は無料で閲覧できますが、この件のように、個人のプライバシーに関する事項は、90日で閲覧できなくなります。
被告が個人再生したのは 2013年くらいの出来事なので、前述の官報サイトでは内容を確認することができません。
しかし、有料の官報情報検索サイトがあり、こちらでなら、被告の名前で当時の官報を閲覧できると思います。
ちなみに、個人再生手続きは、合計 3回官報に掲載されるようです。
何が言いたいかというと、三菱UFJ銀行は、少なくとも 3度、この事件を防ぐ機会があったということです。
もしくは、支店長代理といった要職に就く際、官報で名前を検索しておけば、個人再生の履歴が確認できたかもしれません。
そういう意味でも、三菱UFJ銀行の危機管理体制には問題があったといえ、同行が全く悪くなかったとは言えないと思います。
※日テレの記事では、個人再生に関する記載がなかったので、記載のあった記事を紹介しておきます。
~前略~
検察官は法廷で「民事再生手続きをした。借金は1200万円に上った」と説明する元夫の供述調書を読み上げた。
~後略~
引用元URL:毎日新聞 2025/10/6 16:32配信(最終更新 10/6 17:10
日テレの記事で、FX取引の損失額が明らかになりました。
こちら、損失額ですので、投資額ではありません。
おおざっぱに言えば、17億円を投資して、マイナス11億円という結果ですね。
...なんも言えねぇ。
現状、窃盗額に対する補償は、三菱UFJ銀行が実施しています。
1月時点では 7億円だった補償額が、7月では 11億円となっているので、事実確認がちゃんと進んでいるようですね。
被告が全て記録を取っていれば、いずれ全ての突合が完了しそうでなによりでした。
しかし、名義人がすでに故人となっていて、相続漏れが発生しているケースkつ、被告が窃盗してしまった場合、メモが残っていれば補償されるでしょうが、そこにも記載が無かった場合、届け出や相談自体発生しないので、補償の対象となることはないでしょう。
そういう意味では、真の被害額が確定することはないのかもしれません。
今回は、約4億円の窃盗に関する裁判で、被告に懲役9年が言い渡されました。
残りの部分がどうなるかわかりませんが、被害額が確定したら、次は、所得税法の違反に問われることになると思います。
それは、現行の所得税法が、このようになっているからです。
第2款 所得金額の計算の通則
法第36条《収入金額》関係
36-1 法第36条第1項に規定する「収入金額とすべき金額」又は「総収入金額に算入すべき金額」は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない。
つまり、被告は、17億円の所得があったが、その申告をしていません。
17億の収入があったときの所得税は、 7億6,000万円です。
(1,700,000,000 × 45% △ 4,796,000 = 760,204,000)
それに未申告加算税などが追徴されます。
一応、罪を認め捜査に協力的であり、被害弁済もしていることから、求刑12年から懲役9年の実刑判決となりました。
しかし、現在 47歳の被告、懲役を終えたら 56歳。そこから銀行への弁済と7億超の納税。本件の決着は、まだまだ先のようです。
※税金は非免責債権なので、自己破産しても納税は免除されません。