こーれ、少なくとも実刑判決っすね。
三菱UFJ銀行の元行員が貸金庫から顧客の金塊や現金など、合わせて3億9500万円相当を盗んだ罪に問われている裁判で検察は「顧客の信頼を裏切る悪質な犯行だ」として懲役12年を求刑しました。一方、弁護側は懲役5年が妥当だと主張しました。
~中略~
判決は10月6日に言い渡されます。
引用元:NHK 2025年9月18日 12時45分 配信
「三菱UFJ銀行 貸金庫窃盗の裁判 元行員に懲役12年求刑」
三菱UFJ銀行元行員による、貸金庫の顧客資産窃盗事件について、9月18日、法廷が開かれ、検察は懲役12年を求刑したらしいよ。
検察の主張は、
「FX取引による多額の負債を穴埋めするために盗みを繰り返した。貸金庫の鍵などを管理する立場を悪用し、顧客の信頼を裏切る悪質な犯行だ」
とのこと。
額が額なだけに、用いられる言葉も強いっすね。
それもそのハズ。今回、窃盗事件に対する求刑が12年ということからも、激おこ具合が図れます。
まず、窃盗罪について調べてみましょう。
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
~10年のところを 12年で求刑です。検察がこの貸金庫盗難事件を、どれほど重い罪としているのかが察せられます。
では、どれだけ重いのか?ってハナシ。
今回問われているのは、4億弱の窃盗です。なので、本件と同規模の犯罪として、2件取り上げてみました。
・栃木 5億強奪事件
組織犯罪
首謀者への判決:懲役18年、罰金300万円
・立川 6億円強奪事件
組織犯罪
首謀者への判決:懲役20年
こちらは、いずれも強奪事件ですので、強盗致死傷罪となり、首謀者には重い判決が下アされています。
(強盗致死傷)
第二百四十条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の拘禁刑に処し、死亡させたときは死刑又は無期拘禁刑に処する。
本件は窃盗罪であり、また、単独犯ですから、単純に比較することはできません。しかし、組織で実行するような犯罪を、立場を利用し、単独で行っている分、さらに性質が悪いとも言えます。
首謀者に科された量刑はいずれも重く、本件の懲役 12年求刑ということにも納得できます。
では、強盗ではない業務上横領とではどうなっているかというと...
まず、条文を確認しましょう。
(業務上横領)
第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の拘禁刑に処する。
窃盗とは違い、拘禁刑のみとなっています。
業務上の立場を利用していることもあり、その分重くなってる感じですね。
つづいて、事件と比較してみましょう。
・青森県住宅供給公社巨額横領事件 (通称:アニータ事件)
被害額:15億弱
単独犯
判決:懲役14年
メモ:公社の金を不正に引き出し、チリに豪邸を建てた。
※資産は売却し、5,300万ほどを回収した。
※公社は解散し、債権は青森県に継承した。
※チリでは結婚後に取得した妻の財産は夫のものとなる。
※離婚はしていない。
・ソニー生命不正送金事件
被害額:168億
単独犯
判決:懲役 9年
メモ:海外子会社の口座から不正送金し、暗号資産に投資していた
※後に全額回収された。(結果+50億)
会社にある現金預金を横領しているので、強盗よりも被害総額が、かなり高額になっていますね。それは、組織内にいて、犯行が長期に渡るため、そうなる傾向が強いのでしょう。
前者はいうまでもなく、条文の上限を超えた判決がでていますし、後者は、運のいいことに利益が出ていますが、詐欺 (業務上の指揮移動を装った) を働いていることもあり、全額回収されても、重い判決が下りていますね。
本件は、銀行の中にある顧客の財物を窃盗していますが、銀行で預かった口座預金ではなく、貸金庫内に収納された顧客の財物です。貸金庫は机の引き出しみたいなスペースしかなく、そのため、窃盗された金額は、前述の業務上横領にくらべて少ない額となっています。
しかし、これは、支店長代理という立場を悪用し、顧客と銀行を欺いた非常に悪質な犯罪です。
これは、銀行のみならず銀行業界の信用を失墜させた行為であるため、金額以上に深刻な犯罪だと言えます。それが、懲役12年求刑ということなのでしょう。
一旦、貸金庫窃盗事件のディテールをなぞってみましょう。
山崎由香理被告は、FX取引や競馬にのめりこみ、借金を抱えていました。
そして、支店長代理という立場を利用し、貸金庫業務の責任者であるにもかかわらず、銀行および顧客に無断で貸金庫に出入りし、顧客の財物を盗みました。
それは、1度や2度ではなく、長期的に繰り返されています。
特に、顧客の来客があったとき、「故障中」と嘘をつき、再来訪日程に合わせて貸金庫内の財物をやりくりしていたという、計画性、常習性があり、極めて悪質と言えます。
また、この出来事によって、三菱UFJ銀行のみならず、銀行業界全体への信用失墜を招いてしまいました。
これらのことから、検察が「悪質な犯行だ」と断じるのも納得です。
本件は、17億の内の 4億についての裁判です。なので、10月6日に判決が言い渡されて終わりではありません。
それを考えると、ここで 12年の求刑がそのまま通ってしまうかはわかりません。
しかし、本件の悪質さから、実刑判決が下されると思います。
弁護側の言い分は、
「場当たり的な犯行でストレスなど精神的な面が影響していた。真摯に反省している」
と、言っているようですが、顧客の来店調整、貸金庫内のやりくり管理からは、本件が場当たり的な犯行でなく、計画性の高い犯行だったことが明らかですし、メンタル面への影響は、ギャンブルで負けるせいで、自分がストレス源となっており、かつ、窃盗した財物の利用内容が、FX取引やギャンブル (そのための借金返済を含む) だったことを考えると、この弁護内容で情状酌量を求めるのは難しいでしょう。
「被害者の気持ちを一生忘れることなく罪を償い弁済に向けてまじめに働いていきたい」
と言っているようです。
貸金庫窃盗事件の被害額は、三菱UFJ銀行が補償しています。
どのように償い、弁済していくのでしょう?
17億という金額は、個人がまじめに働いただけでは弁済できない金額です。
まあ、投資の才能などがあれば、ワンチャン、返せなくない金額かもしれませんが、被告の投資の才能は、哀しいかな、これまでのFX取引実績で示しています。
窃盗した財物は、なにか資産に変わったわけではなく、FX取引やギャンブルで溶かしてしまいました。
売却できる資産はなく、お金を儲ける特別な才能があるわけでもなく、47歳が 10年くらいの懲役刑を勤めたあと、どのように償うのでしょうね。
他に忘れてはならないのは、被害総額が確定したら、それに応じて所得税が課されるということです。
第2款 所得金額の計算の通則
法第36条《収入金額》関係
36-1 法第36条第1項に規定する「収入金額とすべき金額」又は「総収入金額に算入すべき金額」は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない。
17億の収入があったときの所得税は...
1,700,000,000 × 45% △ 4,796,000 = 760,204,000