Ozzy に敬意を表するため、"War Pigs" の意訳をやりました。
イスラエルとイランの戦争は停戦したけど、気が付いたら、またイスラエルはガザ地区を攻撃しており...なんてことがあったんで、この曲を選びました。
タイトル:War Pigs
作 詞:Tony Iommi, Geezer Butler, Bill Ward, and Ozzy Osbourne.
作 曲:Tony Iommi, Geezer Butler, Bill Ward, and Ozzy Osbourne.
収録作品:Black Sabbath「Paranoid」
Generals gathered in their masses
Just like witches at black masses
Evil minds that plot destruction
Sorcerer of death's construction
In the fields, the bodies burning
As the war machine keeps turning
Death and hatred to mankind
Poisoning their brainwashed minds
Oh, Lord, yeah
Politicians hide themselves away
They only started the war
Why should they go out to fight?
They leave that all to the poor, yeah
Time will tell on their power minds
Making war just for fun
Treating people just like pawns in chess
Wait till their judgment day comes, yeah
Now, in darkness, world stops turning
Ashes where their bodies burning
No more war pigs have the power
Hand of God has struck the hour
Day of Judgment, God is calling
On their knees, the war pigs crawling
Begging mercies for their sins
Satan, laughing, spreads his wings
Oh, Lord, yeah

War Pigs 意訳
お偉いさんたちが雁首揃え、戦術地図を前に議論を交わしている。
しかしその様子は、魔王の御前で悪だくみに勤しむ魔女の集いにしか見えない。
いかに効率よく破壊し、殺すかの議論とは。
奴らは死の商人。背徳のブタである。
その無情な命令で、死体の山が積みあがる。
戦争を野望の道具とし、
言葉巧みに人心を操り、
死と憎しみをばらまく。
なんとおぞましいことだ!
ブタどもの囀りは、開戦の合図とともに立ち消える。奴らは戦争で私腹を肥やしたいだけで、その結果には興味が無いからだ。
本来、不始末は、ブタどもこそが負うべきだろう。
だがしかし、いつもあおりを食うのは、何も知らない子羊たち。
奴らは専横を極めた権力者だが、そこで何をしたか明らかになる日も近い。欲望の赴くままに戦争をはじめ、
人々の命など替えのきくコマのように扱う輩には、
そう遠くないうちに裁きが下るだろう。その日を待つがいい。
今、世界は闇に覆われ、大転換期を迎えた。ブタどもは権力を失い
築き上げた全ては灰に帰すだろう
すでに審判は、神の手に委ねられた。
審判の日神の御前で豚どもは無様に這いつくばり
保身に塗れた空虚な告解を繰り返すだろう。
サタンをそれをうろんげに一瞥すると、翼を大きく広げ、全てを覆い隠してしまうのだ。
すべては神の御心のままに。
Ozzy Osburne が、2025年7月22日、闇の御許へ還りました。76歳でした。
7月5日には、Black Sabbath 最後のコンサート「Back to the Beginning」が開催され、会場には 4万人を超えるファンが来場。また、その様子は、Livestream 有料配信で、延べ 580万人以上が視聴しました。
本公演はチャリティコンサートだったので、その収益 270億円は、慈善団体に寄付されたことが報じられています。
改めて、Ozzy Osbourne へ敬意を表します。
さて、"War Pigs" の意訳です。
歌詞自体はそれほど長くなく、内容も「反戦」なので、イメージを掴むのはそう難しくはありませんでした。
しかし、”War Pigs” という楽曲には、前のVer があり、そのタイトルを "Walpurgis" といいます。歌詞に「Just like witches at black masses」とあったり、端々にその名残を感じることができます。
なので、ぼくは、その名残も含めた意訳にしたかった。そして、Black Sabbath というバンドが持つオカルティックな雰囲気も出したかったということもあり、その折り合いをつけるとき、どういう言葉遣いにすれば良いか?で、だいぶ悩みました。
まず、冒頭の部分
Generals gathered in their masses
Just like witches at black masses
最初にイメージしたのは、「兵士たちを前に (実質的に、祖国とかではなく) 権力者のために死ねと命令をくだす将校」ってイメージだったけど、その後の魔女の黒ミサ (ワルプルギスの夜) のイメージと繋げたかったので、悪だくみってイメージをつけやすいブリーフィング風に意訳しました。
「in their masses」は、集団行動を表現する言葉だから、全体的なイメージからの逸脱はないという判断です。
War Machine Keep turning
これも相当悩みました。
最初は、「War Machine」をそのまま「兵器」ってイメージで訳し、その部分を「殺人機械が巡回する戦場で、死と破壊をばら撒き、死体はそこら中で燃えていた」というような意訳をしたんですが、”War Pigs”で非難を向けるのは、開戦を主導した死の商人たちなので、「戦争を昇進の道具として扱ってきた=戦争を野望の道具としてって感じにしました。つまり、Turning を自伝って感じに解釈した感じです。
They leave that all to the poor,
ここを「いつもあおりを食うのは、何も知らない子羊たち」としたのは、単に「貧乏人、困窮者」というイメージではなく、「持たざる者」という感じと「哀れな」という語感を出したかったので、「子羊」としました。
world stops turning
権力者を中心に回っていた時代 (World) が、終わり (stops) を告げ、移り変わる (Turning) というイメージから大転換期。
Hand of God has struck the hour
「神の手によって審判が下る時」という訳をしていたのですが、「Hand」を「手」ではなく「手渡す、提出する」という動詞として解釈することで、「神の手に委ねられた」という訳に変わりました。
また、SATAN については、魔王という感じではなく、堕天する前の天使のイメージで意訳しています。
旧約聖書にて、神はヨブの忠誠心をいたく気に入りましたが、サタンは懐疑的。そんなサタンに、神は「ヨブに対して試練を与えてみれば、お前も彼が善人だとわかるだろう」的な言葉をかけるくだりがあって、結果、ヨブは試練を乗り越え、家は繁栄するってお話しがあった (この説明は自己解釈にすぎないので注意) んですが、この歌詞で、神にへつらい、許しを乞うのは、善人のヨブではなく、悪人であるブタどもです。
神は罪を犯したものに正しく罰を与える存在なので、ここでのSATANの役割は、神の意向に従い、ブタどもをこの世から隠し (取り除き) ました。
「審判をくだした」など、直接罰を下された描写ではなく、「隠した」という意訳にしたのは、イギリスの詩人 Robert Browning "Pippa's Song" にある
God's in His heaven--
All's right with the world!(神、そらに知ろしめす。
すべて世は事も無し。)
のように、天に神がおわすのだから、世界は平和で、ブタなんていなかった。いいね?みたいな雰囲気をだしたかったからです。
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